糖質制限・ケトン食で癌撃退!?

近年、ダイエットとして流行している「糖質制限」が、癌治療の分野でも注目されています。

癌細胞はぶどう糖を主なエネルギー源としており、正常な細胞の5倍以上のぶどう糖を取り入れなければ、生きていけません。そのため、糖の摂取を制限すれば、癌の栄養となる糖が断たれ、癌が抑制されると考えられています。

この考えから、ここ数年で広まっているのが「ケトン食」によるがん栄養療法です。ケトン食とは、脂肪とタンパク質の摂取量を増やし、糖質を減らす食事療法です。体内に存在する  ぶどう糖(グルコース)の量が減ると肝臓に蓄えられているグリコーゲン(グルコースが結合した高分子)が、足りない糖を補うため、ぶどう糖に分解され、利用されるようになります。しかし、グリコーゲンは24時間ほどで枯渇してしまうため、その後は筋肉中のたんぱく質や脂肪細胞に蓄えられている脂肪酸がエネルギーとして使われます。この脂肪酸から作られるのが「ケトン体」です。人間が何も食べなくても数日間生きられるのは、このケトン体のおかげと言われています。

一説によれば、食事制限をしてケトン体を発生させることは、寿命を伸ばす効果もあると言われています。実際に、長寿に関わる遺伝子とケトン体の産生との関連も報告されています。

2011年にドイツのグループが末期の癌患者にケトン食を試したところ、Quality Of Life(ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のこと)の改善が得られたとの臨床結果が報告されました。日本の大阪大学の研究チームでも研究が行われ、ステージ4(癌が一番進行した状態)の患者55名への臨床研究で、最終的に37名が少なくとも3ヶ月間、ケトン食療法を行いました。この研究では、一部の患者が寛解(一時的・継続的に回復すること)に至るなど、予想を上回る臨床効果が得られました。

糖質を制限するケトン食は合理的な治療方法といえますが、ケトン体が体内で増えるということは標準的な状態ではなく、生命を維持するための防御であることも忘れてはなりません。自己判断でケトン食を行うと、身体に悪影響を与えてしまう場合もあります。誰にでも適しているというわけではないため、食事療法は医師の指示のもと行うようにしましょう。