彩り豊かな紅葉の世界

10月に入ると、全国で徐々に紅葉の見頃が始まります。葉が赤く色づく様子は、日本らしい情景を目の前に作り上げ、心を癒してくれます。実は、モミジもカエデも、どちらもムクロジ科カエデ属の広葉樹の総称で、植物の分類上は同じです。葉の切れ込みが深いものを「〇〇モミジ」、葉の切れ込みが浅いものは「〇〇カエデ」と呼んでいます。

モミジの名の由来は、秋に草木が黄色や赤色に変わることを意味する動詞「もみず」が名詞化して「もみじ」になり、それから転じて、特に目立って色を変えるカエデの仲間を「モミジ」と呼ぶようになりました。一方、カエデの名の由来は、葉がカエルの手に似ていることから万葉集で「かへるで」と名称が残っており、それが「カエルデ」から「カエデ」という呼び名になったという説があります。日本国内で見ることができるモミジやカエデをいくつかご紹介します。

【イロハモミジ】

日本でよく見られる種類のモミジです。名前の由来は、葉の5~7裂の切れ込みの数を、「イロハニホヘト…」と数えたことが由来しているそうです。樹皮は淡いグレーで、表面には縦縞模様が入っています。また、葉はギザギザしており、先端は狐の尻尾のような形をしています。

【ハウチワカエデ】

葉の形が、天狗が持つ羽団扇(はうちわ)に似ている事から名付けられました。全体的に葉が丸いことと、秋の名月の光で落葉し、紅葉も見られることから別名「名月楓(めいげつかえで)」とも呼ばれています。葉は直径10~13㎝程で、モミジとカエデの中では一番大きい種類です。

【トウカエデ】

街路樹や庭木で最もよく見かける種類です。葉は、浅く3つに切れ込みが入っておりチューリップのような形をしています。暖かい地域では真っ赤になることは少なく、鮮やかな黄色や橙色の紅葉が多いようです。

美しい紅葉の条件は、晴れた日が続き、十分な太陽光が葉に当たること。昼夜の寒暖差が大きいこと。葉が枯れない程度の適度な雨が降ることです。これらの条件が揃うと、紅葉に必要なアントシアニンという赤の色素の合成が促進され、葉が鮮やかに色づきます。美しい紅葉を見に、お出かけしてみてはいかがでしょうか。