日本の「貯金神話」が崩れる?
40年以上前の話ですが、郵便局の定額預金の利率が11%を超えていた時期がありました。複利計算で10年後には元金が倍以上に増えるという優れモノです。今の80歳以上の方々は貯金の利息でも稼げた世代で、当時は物の値段も上がり続けていましたがそれをしのぐ利益が預貯金から得られていました。
ところが最近の預貯金の利息は雀の涙ほどで、口座から現金を動かす人が少ないのはバブル崩壊で株の大暴落を目の当たりにしたのと、その後に進んだデフレが影響しているようです。30年前はスーツ1着で5~6万円していたのが、今は2~3万円が相場です。資産が増えなくなった一方で物価もかなり下がった為、手持ちの資産価値は相対的に上がることになり、堅実に貯金しておけば安心と守りの態勢に入ったのでしょう。
そうして高金利時代からバブル以後のデフレ時代にかけて、日本の多くの人々のアタマの中では貯金が投資に勝る「成功体験」としてインプットされ「ヘタな投資はケガの元」という感覚がすっかり沁みついたようです。しかし現在はデフレではなくインフレに転じていて、生活に必要な何もかもが急激に値上がり始めています。それはつまりデフレ時代とは逆に、せっせと貯めたお金の価値が下がっていくということに他なりません。この勢いで物価の高騰が続けば5年後、10年後には3000万円あっても望む生活が維持できなくなるかもしれません。
それにもかかわらず日本人は「預貯金偏重」の傾向から抜け出せておらず、政府も国民に対して積極的運用による資産形成にシフトするよう誘導しようとしていますが、ほとんどの人が及び腰です。好んで経済の勉強をした人はともかく、それ以外の人は資産運用に関する知識や、リスクを正しく理解するための総合的な判断能力『金融リテラシー』を身につける機会や、必要性を知らなかったので、仕方ありません。
アメリカでは国民の『金融リテラシー』を高める取り組みとして「個人退職勘定」や「企業型確定拠出年金」などが整備されていたので投資にチャレンジしやすく、折しも好調だった企業への株式投資が成功を納め、それがアメリカの人々の成功体験となったようです。今ではアメリカ国民の個人投資において株式や債券などが占める割合は5割以上で現金預金はわずか1割ほどになっているとのこと。
かくして、貯金に固執する日本人と積極的な資産形成を行うアメリカ人との差は歴然と現れております。資産の目減りを防ぐ為にも、手持ちの資産を自分で育てる投資を賢く選んでいけたら良いですね。