疥癬とイベルメクチン

今回は皮膚病の一種 疥癬(かいせん)に対するイベルメクチンの有効性に関して調べてみました。

疥癬とはなに

疥癬とは、ヒゼンダニ(疥癬虫)が皮膚の角質層に寄生して起こる皮膚感染症です。人から人へ感染し、海外旅行者で多くみられます。疥癬には、次のような特徴があります。

通常疥癬と角化型疥癬の2つのタイプがあります。通常疥癬は少数寄生ですが、激しい痒みを伴い、角化型疥癬は多数のダニが寄生します。

1~3mm程度の赤いブツブツが、胸や背中などに多くみられます。外陰部や脇の下には、やや硬い丘疹(きゅうしん)がみられることもあります。

感染してから症状が出るまでの潜伏期間は1~2か月です。

自然治癒することはなく、飲み薬や塗り薬での治療が必要です。 疥癬は、肌と肌、手と手が直接触れることで感染します。また、患者が使用した寝具や衣類などを交換せずに他の人が使用することで感染することもあります。

イベルメクチンの効果

日本ではあまり寄生虫感染症というとなじみがないかもしれません。イベルメクチンを有効成分とする「ストロメクトール錠」は日本では「腸管糞線虫症」と「疥癬」という2つの病気に対して用いられます。腸管糞線虫症は名前の通り線虫による感染症であり、疥癬はダニの繁殖により生じます。イベルメクチンは、線虫やダニを死滅させる効果を発揮します。

イベルメクチンの副作用

イベルメクチンの副作用は特に発現頻度が高いものはありませんが、腸管糞線虫症の患者に対してストロメクトール錠を投与した臨床試験では8%程度の患者に肝機能の異常が認められています。肝機能の異常は自分ではわからないことが多いため、血液検査をして確認することが一般的です。その他頻度は低いですが、悪心や嘔吐などを生じることがあるそうです。

つぎに、イベルメクチンと他の治療薬との飲み合わせについて紹介します。治療薬には、医師の処方せんを基に処方される処方薬と、自分でドラッグストア等で購入することができる市販薬があります。

処方薬との飲み合わせ

特に、疥癬に対してイベルメクチンを使用している場合は、とても皮膚が痒くなる病気なので、かゆみ止めが一緒に処方されているケースがあるかと思います。イベルメクチンは医薬品の説明書において、特に飲み合わせの悪い薬は記載されていませんので他の処方薬と一緒に使用してもよいと考えられます。例えば、抗生物質や風邪の際に喉の痛みに対して使用されるトラネキサム酸や、その他咳止め等との飲み合わせも問題ありません。

市販薬との飲み合わせ

市販薬は多種多様な成分が含まれるので、すべての市販薬について飲み合わせが問題ないと明言することは難しいですが、よく使用される風邪薬や解熱鎮痛薬、胃薬、整腸剤などは特にイベルメクチンとの飲み合わせは問題ないと考えられます。

しかし、例えば風邪薬に含まれる鼻水を止める成分である抗ヒスタミン薬は、疥癬の痒みの症状を隠してしまう可能性がありますので注意が必要です。

食品との飲み合わせ

普段私たちが食べている食品と、イベルメクチンとの飲み合わせについては特に問題ないと考えられます。つまり「これを食べてはダメ」というものはありません。しかしながら、イベルメクチンは高脂肪食を摂った後に服用すると、その脂溶性から吸収量が増加し副作用が生じるおそれがあります。そのため、使用方法としては「水のみで空腹時(食後2時間)に服用する」ことと規定されています。

イベルメクチンと一緒に使える市販薬

イベルメクチンを服用している方で、市販薬を使用したいとなった場合に①解熱鎮痛薬、②風邪薬、③胃薬の3つのカテゴリから飲み合わせが問題ないものを2~3つ紹介したいと思います。

解熱鎮痛剤 3選

①ロキソニンS  ②ナロンエースT   ③タイレノールA

風邪薬 3選

①パイロンPL錠ゴールド      ②エスタック総合感冒  ③パブロンエースPro微粒

胃薬 2選

①ガスター10 S錠    ②アシノンZ胃腸内服液

いずれの市販薬にも言えますが、服用しても症状が改善しない・または悪化する場合は、市販薬では対応しきれない場合や、他の原因がある場合がありますのでそのような場合は医療機関で診察や検査を受けた方がよいと思います。

最後に

今回は、イベルメクチンの疥癬に関する効果などを紹介させていただきました。また、疥癬とは別の皮膚病(尋常性乾癬)を長年患っている方がおり、イベルメクチンを服用したことにより、症状がかなりよくなったことを体現しておりますので、皮膚病には非常に効果が出る薬だと思います。また一方で他の疾病にも効果がみられるとの報告も聞き及んでおりますので、ご参考になさっていただければと思います。