表現豊かな日本語を調べてみたら
日本語には、一般に知られている意味と、本来の意味が異なる言葉が多くあります。いくつか調べてみましたので、紹介させていただきます。
秋には旬の鯖を食べる機会も増えるかと思いますが、「秋鯖は嫁に食わすな」という言葉があります。これは「美味しい鯖を嫁に食べさせるのはもったいない」という姑のイジワル心からの言葉と思っている方も多いようですが、正反対の意味もあり、「痛みやすい鯖を食べて、嫁が身体を壊さないように」という思いやりの言葉なのです。
また、年齢などをごまかす時に「サバを読む」と言いますが、ここで言うサバとは、魚の鯖のことです。江戸時代、日本の近海では鯖が多く穫れました。当時の魚の売買は目方ではなく、数で行われていたのですが、痛みやすい鯖の取引は一刻を争います。そのため、正確に数えず目分量で売り買いされ、鯖の取引では実際の数と、取引時の数が一致しないことが多かったのです。そのことから、「サバを読む」という言葉が、「実際の数字と異なる」という意味で広く使われるようになったようです。
他にも、よく誤解される例として、「役不足」という言葉があります。「この仕事は、君じゃ役不足だよ」と、その人には難しい仕事、という意味で使われたりします。しかしこの言葉の意味は全く逆で、「役(仕事)が、その人にとって簡単すぎる」という時に使う言葉なのです。
もう一つ、「情けは人の為ならず」という慣用句があります。「人に同情して何かしても、その人の為にならないから、しない方がよい」という意味で使われますが、これも逆で、「人に情けをかけると、巡り巡って自分の為になる」という意味なのです。誤解されるようになった要因は、古語の捉え方です。「情け」は、現代では同情や哀れみと捉えられることが多いですが、古語では情愛や優しさという意味になります。また、「ならず」は、古語で「~ではない」という打消しの意味であり、「人の為にならない」ではなく、「人の為ではない」という意味になります。
普段、気にとめず使っている言葉でも、改めて調べてみると、思ってもいない意味だった、ということに出会えるかもしれません。秋の夜長に、色々な言葉を調べてみるのも良いかもしれませんね。