長寿な虫たち
一般的に虫は短命だと言われています。例えばハエや蚊の仲間は2週間から1ヶ月程度しか生きられません。カゲロウに至っては羽化後の寿命は数時間から数日と、たいへん短いです。それだけ速いサイクルで世代交代を繰り返して、種の存続を狙っているわけです。しかし自然界には長生きする種類の虫も数多くいます。
【13年ゼミ・17年ゼミ】
アメリカには周期ゼミと呼ばれる、13年や17年の周期で成虫になるセミがいます。こうしたセミたちは13年、または17年もの間、真っ暗な地下で生き、大人になると大地に現れて大空での短い生涯を全うするのです。
しかし寿命が長いということは、それだけ危険な目にあって、生きながらえているということになります。周期ゼミは、すべての仲間が13年や17年も生きられるわけではありません。なかには長いこと餌にありつくことができなかったり、地中の動物などに捕食されたりして、短命に終わるものもあるでしょう。
つまり、17年生きながらえて、子孫を残せるセミは運が良いか、それだけ強い生命力を持っている証拠だと言えます。強いものを残していくことで、さらに強くなり、優秀な子孫を残していこうという狙いが見えてきます。
【ナスティテルメス・シロアリ】
オーストラリアに生息するナスティテルメス・シロアリの女王アリは、なんと約100年もの寿命を持つと言われています。この女王アリは、300万匹以上のアリたちのコロニーの存続を支える要として、一生を捧げる存在です。体長は10cmにも達し、驚異的な産卵ペースで、一生で約50億個もの卵を産み続けます(1日当たり約14万個、1時間あたり約6000個にもなります)。そして生まれてきた卵は、コロニー全体で大切に育てられます。
寿命の長い短いに正解はありません。短命の虫は卵が孵って、少しでも早く成虫になり、次の卵を生む。このことで、外敵から狙われやすい幼虫の期間を少しでも短くしようという狙いがあるのかもしれません。また、必要な餌も最小限で済むでしょう。
長く生き続けられる優秀な種を残し、役割分担することで種の存続を狙うか、とにかく速く成長して多くの卵を作ることで種の存続を狙うか、方向性は正反対に見えます。興味深い生存戦略ですね。