氷河湖決壊による自然災害

“氷河”は、標高の高い山岳地帯や、高緯度地域において、雪が降って凍り付き、融ける間もなくさらに降り積もって、何万年もの間に堆積、圧縮されて出来る、氷の塊です。これが1年に10メートルから、場所によっては数百メートルも流れて動くので、“氷河”と呼ばれています。氷河は山岳地帯であれば斜面を下に向かって滑り落ち、平原の広大な氷床(氷河の規模が大きいモノ)については、氷塊自らの重みによる変形で動くのではないかと考えられています。また、底の部分の温度が比較的高く、薄い水の膜が出来ている氷河では、その膜の上を底滑りしていると見られます。

そんな氷河ですが、湖を作ってしまうことがあります。山岳地帯にある氷河が、何万年もかけて斜面を削りながら流れ落ちた後には、深い谷が刻まれ、そこに雪解け水や雨水が溜まって湖になります。中には氷河そのものにせき止められて出来る場合もあり、これら天然のダム湖を、“氷河湖”と呼んでいます。氷河湖は、時々溢れかえって大洪水を引き起こします。

例えばアイスランドでは、1996年に火山噴火が引き金になって、氷河が崩落して湖を溢れさせました。決壊した時の水量は、1秒間に45,000立方メートルにも達したそうで、国道を破壊し、大変な被害をもたらしました。氷河湖決壊が起きると、ダムの決壊と同様、陸地の高い所から大水が襲ってくることになるので、その威力の凄まじさは、想像を絶します。
ネパールでも、数十年前から氷河湖決壊による大洪水に見舞われています。1985年に起きたディグ・ツォ氷河湖決壊の他、標高4,100メートルを超える位置にある、4つの氷河湖でも洪水が起きる危険性があるとしています。また、ネパール国内だけでなく、隣接するチベットにも危険な氷河湖があり、これが決壊すればネパールにも相当な被害が及ぶと予想しています。 つい先日、学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に、氷河湖決壊の潜在的な影響に特化した研究論文が掲載されました。それによると、氷河湖決壊による大洪水は、内陸で「津波」が起きるようなものであり、それが もたらす被害は、どれだけ強調しても足りない程、甚大なものになるだろうとしています。

地球温暖化の影響もあって、氷河の融解が急速に進む中、危険はかつて無いほど高まっているそうです。この先、洪水が起きれば、世界中で氷河湖から約48キロ以内に暮らす、1,500万人もの人々が巻き込まれる恐れがあり、その半分以上が、インド、パキスタン、ペルー、中国の4カ国に集中しているといいます。

少しでも温暖化を遅らせるために、脱・炭素に向けた取り組みに協力していきたいですね。