飲酒量と病気のリスク

お酒が好きな人にとっては嬉しくない情報ですが、飲酒とがん発症のリスク関係はこれまでの研究で十分に確認されていて、アルコールがアスベストや放射線、タバコなどと並んで発がん性物質のグループ1(発がんリスクが一番高いグループ)に指定されていることはご存じの方も多いかと思います。大量に飲まなければ大丈夫、と思っている方も多いかもしれませんが、最近の研究では異なる結果が出たようです。

アルコールと健康に関する研究は「どれだけ飲めば健康に悪い影響が出るのか」という観点から始まり、その研究結果として、毎日60g以上飲むと、がんを始めとする様々な病気のリスクが高まるということが分かり、それが目安となりました。次にどのくらいまで飲酒量を減らせば良いのか、ということが検討されて1日のアルコール摂取量が10~20g程度の人が最も死亡率が低かったことから、それが「節度ある適度な飲酒量」となりました。また、女性は一般的に男性よりもアルコールの分解速度が遅いため、さらに半分程度と考えた方が良いとされています。これらの研究結果を端的に表しているのが「Jカーブ」と呼ばれるグラフです。グラフを見ると、飲酒量がゼロの人より1日の飲酒量が10~20gの方が死亡リスクが低いことになっているのでグラフが“J”を描くのです。

これを根拠に「お酒も適量なら健康に良い」という認識が世間一般に広まったと思われますが、どうやらそれは愛飲家の希望的観測だったようで、ある医学雑誌でWHOがそのような考えをバッサリと切り捨てています。 そもそも少量のアルコールが病気の予防に効力を発揮するのは、心筋梗塞などの心疾患の病気に対してで、がんや肺病、その他の病気については逆効果でしかないとのこと。最近、改めて分析を行った結果、Jカーブは消え「総合的に見て飲酒はゼロが一番」と結論付けたということです。ちなみに、この新しい分析結果では、死亡リスクを急激に高めない(リスクの上がり方が緩やかな)飲酒量は週に100gが上限とされていて、これまで言われてきた1日20g(週に140g)を大幅に下回る数字となっております。

お酒は少量であっても人体に良い影響は与えないようですので、お酒を飲まれる方は飲酒の習慣を改める必要がありそうですね。