スイス銀行の正体
“スイス銀行”とは、スイスに本拠店を置き「スイス銀行法」に基づいて運営されているプライベートバンクを指す総称で、「スイス銀行」という名の銀行はありません。
プライベートバンクとは、18世紀初頭にスイスの商人たちが考え出した、銀行とその顧客の機密を保持し、利益を守るためのサービスシステムが元になっているそうで、伝統的に顧客情報の秘匿性が高いことで知られています。その多くは一般の商業銀行とは異なり、世界中の大富豪の巨額の個人資産を預かり、特別なサービスを提供しています。口座の持ち主の氏名は伏せられ、顧客の任意による管理 番号が設定されており、顧客の身元を知るのは、顧客担当行員と一部の幹部のみなんだそうです。管理番号が漏れても身元を割り出すことは不可能で、顧客同士が顔を合わせることを避けるために来訪は完全予約制で、エレベーターも担当者が待っているフロアにしか止まらないのだとか。
また、余程の事が無い限り、たとえ警察からの要請であっても、顧客情報を漏らすことはありません。というのが、スイスのプライベートバンクの伝統的なこだわりでした。その秘匿性がマネーロンダリングや脱税など、犯罪に利用されることもあるため、批判も多いのですが、それにより「スイス銀行法」が弱体化することはなく、顧客を守る姿勢が徹底されてきました。
しかし、近年では一部情報公開に応じるケースもある模様。例えば2009年には、当時のアメリカのオバマ大統領が自ら、スイスのUBS Group AG(スイス最大の商業銀行、プライベートバンク)に対して、アメリカ人顧客のリストを開示するように強く求めました。米国内でのビジネスを停止されることを恐れたUBSはその要求を呑み、他のプライベートバンクもそれに倣ったという話です。そんなわけで、今では 「スイス銀行」が数百年に渡って堅持してきたスタンスは、昔に比べてかなり、鳴りを潜めているのかもしれません。さらに最近では、クレディ・スイス(スイスの銀行、プライベートバンク)が、UBSに買収され、世界を震撼させました。
かつては、破綻など考えられなかったスイスの大手銀行が、この有様です。「大きくて古い」だけでは乗り越えてゆけないようです。