農林中金の1.2兆円の資本増強の意味する事とは!?
5月18日、農林中央金庫が総額1.2兆円の資本増強を検討していることがわかりました。米金利高の影響により、含み損を抱える米国債などの運用収支が悪化したため、出資者のJAなどと協議に入りました。損失処理については、2025年3月期は5000億円超の最終赤字に転落する見通しとなりました。
日経新聞の記事が伝えたこの状況は、世界的な金利上昇に起因する問題の一例に過ぎません。日本が直面する経済危機の氷山の一角と言えるでしょう。世界的な金利上昇により、保有する債券に含み損を抱えているのはメガバンク3社も同じですが、メガバンク3社は2期連続で最高益を更新するのに対して、農林中金が巨額の資本増強を迫られているのは、外債投資の比重が大きいことによります。そして最も注目すべき点は、「世界で最も多くの債券を保有している機関が日本銀行である」という所にあります。さらに、日銀は債券を非常に高値で購入しています。そのため、金利が上昇すると、最も大きなダメージを受けるのは日銀なのです。
日本は長らく他国に比べて圧倒的に低金利を維持してきました。今後、金利が上昇すると、多方面で重大な経済問題が発生する可能性があります。そのため、日銀は政策金利を容易に引き上げることができないジレンマに陥っているのです。その結果が円安の進行です。歴史的には稀なことですが、日銀の政策金利では市場金利をコントロールできなくなる可能性もあり得ます。この政策が続くと、長短金利が一気に急上昇する恐れがありますが、この事態を「日米金利差拡大による円高」と安易に捉えてはいけません。これは日銀による市場金利のコントロールの終末を示している可能性があるからです。その場合には早めに“円”から避難をした方が良いのかもしれません。
農林中金の1.2兆円の資本増強検討は、日本経済の根深い問題の表れであり、世界的な金利上昇が引き金となって引き起こされる一連の問題の一端に過ぎず、特に日銀が抱える巨額の債券とその高値購入という状況が、今後の日本経済に与える影響は計り知れないでしょう。
今こそ、円安や金利上昇に対する正しい理解と適切な対応が求められているのではないでしょうか。